偽りの名 呵々闘諍の日記(力水の書いたやつ) 決闘時空まとめページ 2014-03-27(木) 決闘時空(デュエルスペース)第八話 Part4 神の一撃が魔王へと解き放たれた。 「罠カード、発動!」 『ラー』の放った炎が《大盤振舞侍》に直撃する寸前、愛縷は残された1枚の伏せカードを発動させた。 「『ラー』に罠は通用しません!」 「だから『ラー』には使わない。」 突如《大盤振舞侍》の前に黒い影が出現し、神の攻撃を阻む。 「「「なにっ!?」」」 『ラー』の攻撃を前に立ちはだかったのは、“神”であった。 それはありとあらゆる色を取り込み、ありとあらゆる異形の部位の塊で形を成している。 “混沌”という言葉が似つかわしい存在。 「《シフトチェンジ》で攻撃対象をセットしていた《ヴェルズ・アザトホース》に変更させてもらったよ。」 「《シフトチェンジ》!!」 神である『ラー』には罠カードは通用しない。しかし、『ラー』に罠が通用しないだけで、罠カードの効果を無効にするわけではない。さらに、攻撃は守備表示モンスターに当たったため、戦闘ダメージも発生しない。 「ここで《ヴェルズ・アザトホース》のリバース効果発動。特殊召喚されたレベル5以上のモンスター1体をデッキに戻す!」 「レベル5以上のモンスター!?」 「「パラコン(君)!!」」 レベル5以上のモンスターと聞いてパラコンは焦り始める。場に存在するモンスターで『アザトホース』の効果範囲のモンスターは《究極完全態・グレート・モス》と《ラーの翼神竜》の2体。『ラー』は神でありモンスター効果を受けないため、残された選択肢は必然的に『グレート・モス』だけとなる。 「僕がデッキに戻させるモンスターは…《ラーの翼神竜》!!」 「え…?」 突然の宣言に川原は一瞬耳を疑った。その一言はあまりにも唐突で、あまりにも信じられないものであった。 「『ラー』を選んだ…?」 「こいつ、『ラー』の効果を忘れたのか…?」 鷹野もパラコンも同様に戸惑い、呆れさえ抱いていた。 「さあ、《ヴェルズ・アザトホース》、『ラー』を消し去ってしまえ!」 大量の異形の腕という腕が『ラー』に纏わりつく。『ラー』は腕を振り払い、抵抗していく。 だが、腕が『ラー』の頭部と融合している川原を掴んだ瞬間、『ラー』は苦しみ始めた。 「ど、どうしたの、『ラー』?!」 川原は腕に掴まれているにも関わらず、『ラー』の心配をしていた。それほど『ラー』の神威に対して絶対の信頼を寄せており、『ラー』が倒されるなど考えていなかったからだ。 「馬鹿な!?いくら“神”でも、ただのモンスターであるはずの『アザトホース』に『ラー』に対抗できる神位など無いはず!?」 「できるんだよ、鷹野さん。君たちの世界ではただのモンスターかもしれないけど、“こっちの世界”では『ラー』よりも神位が上なんだよ!それこそ、《神縛りの塚》の影響を受けないほどの!」 「う、嘘!?」 『ラー』から引き剥がされまいと川原は踏ん張るが、『ラー』は悲痛な叫び声を上げているだけで体は既に大量の腕に掴まれて身動きが取れなかった。 「さすがに神だけはあるねぇ。簡単には分離しないか。じゃあ、デュエリスト能力発動。」 愛縷が能力発動の宣言をすると、空中に亀裂が走り、罅が割れたような音と共に巨大な鎌が出現した。 その鎌は『ラー』に向かって振り下ろされる。 「ぐぁああああああああああああああああああ!!」 「きゃああああああああああああああああああ!!」 『ラー』の体を鎌は刺し貫き、『ラー』と共に川原は叫ぶ。『ラー』は黄金の輝きを次第に失っていき、声も鳴き止むと真っ白になってしまった。 そして、塵となって消えていき、川原だけが残った。 「はぁ、はぁ…そんな…『ラー』が…。」 絶対と思われていた『ラー』が1体のモンスターにいともたやすく敗れ、川原の顔には絶望の色が映し出されていた。 《ラーの翼神竜》(ATK7999)→《ヴェルズ・アザトホース》(DEF1950) 《ヴェルズ・アザトホース》(破壊) 「これで厄介な『ラー』は消えた。」 愛縷は強力なモンスターが居なくなったことで安堵の溜息を吐いていた。 「次はお前の番だ!!」 「うぇ?」 パラコンが吠えると、《究極完全態・グレート・モス》が攻撃を始めており、両翼で起こした竜巻が《大盤振舞侍》を襲った。 「ぐぇ!!」 究極完全態・グレート・モス ATK3500→大盤振舞侍ATK1000 愛縷 LP8000→LP5500 『グレート・モス』の攻撃によって愛縷のライフを削ることが出来たが、これによってパラコンがデュエルに勝利することはなかった。本来ならば、《究極完全態・グレート・モス》で相手に戦闘ダメージを与えた時、相手のライフを0にするパラコンのデュエリスト能力が発動する。 レベル1 地べたに這い蹲る虫けら(グラウンド・ゼロ) 正規の手順で特殊召喚された《究極完全態・グレート・モス》で、相手に戦闘ダメージを与えたとき、相手のライフポイントを0にする。 しかし、愛縷の持つデュエリスト能力『怒炎我龍』は戦闘ダメージ以外のライフポイントの変動を無効にしてしまう。そのため、戦闘ダメージによってライフポイントを削ることは出来ても、パラコンの能力によってライフを0にすることは出来ないのだ。 「いてて。昆虫族最強のモンスターの攻撃は堪えるなぁ。」 鷹野達は愛縷にダメージを与えたものの、それ以上に損失の方が大きく、愛縷の反応に一々神経を逆なでられていた。これこそが、愛縷の目的であるとも知らずに…。 「私はカードを2枚伏せる。(手札3→1)」 「私もカードを2枚伏せます…。(手札2→0)」 「これで僕らのターンは終了…。」 鷹野と川原はそれぞれカードを2枚ずつ伏せる。場には《究極完全態グレート・モス》と伏せカードが4枚と普段のデュエルでは崩すのに骨のいるシチュエーションであるが、川原のライフポイントが残り1ポイントしかないこと、パラコンの手札が尽きていること、愛縷の所持する能力の全貌がわかっていないこと、様々な要因が鷹野達の不安を煽っていた。 (32ターン目)(《時の飛躍》の影響によるもの》 愛縷:LP8000、手札4 場: 場: 鷹野 麗子:LP4000、手札1 パラコン:LP8000、手札0 川原 静江:LP1、手札0 場:《究極完全態グレート・モス》 場:伏せ×4、《神縛りの塚》 「僕のターンだね、ドロー。(手札5→6)」 前の愛縷のターン終了時には無くなっていたはずの手札がいつの間にか5枚に増えており、このドローによって6枚になっていた。パラコンと川原の二名は困惑していたが、鷹野は冷静に状況を判断し、愛縷の能力のカラクリを理解し始めていた。 (おそらく、あいつの持つ能力の一つは手札に関する能力。そして、今までの使用した能力は、手札補充、特殊ダメージへの防御、モンスターやデュエリスト能力無効の3つ。ここまで来るとあと最低一つは“あれに関する能力”があるはず…。いくら考えても仕方ないわね。あいつがどんな能力を持っていようが関係ない。勝つのはこの鷹野麗子よ!) 「さて、鷹野さんは大分僕の能力の正体に気づいてきたようだね。」 鷹野が能力について頭の中で考察していると、愛縷はそれを見透かしたかのように話しかけてきた。 「鷹野さん、本当!?」 「あいつの能力が何か分かったの!?」 川原とパラコンは鷹野に問い詰める。鷹野は強張った表情のまま、語り始めた。 「まだ確証は無いけど、あいつ自身の持つ能力は一つだけよ。」 「ひ、一つだけ!?」 「あんなに色んなことが出来るのにたった一つ!?」 「そう、あいつの持っているカードでV能力を持つカードがあるわ。でも、そのV能力はテキストに従えば1人につき、1枚しか発揮できないことになっているわ。」 「1人につき、1枚だけ…。」 「……っ!!ま、まさか!?あいつの能力って!?」 鷹野の話を聞いてパラコンは瞬時に理解し、動揺した。蓋を開けてしまえば、たったこれだけと思えてしまう能力。しかし、その能力には大きな未知が含まれている。 「そう、あいつの能力は、『自分の持つ全てのV能力を使える。』よ!」 「…っ!!」 パラコンと川原は稲妻が走ったような衝撃に身体が襲われたような感覚を覚えた。説明した鷹野本人も冷や汗をかいている。能力の正体が分かったにも関わらず、それが正体不明であるという矛盾、そのもどかしさが恐怖と不安を掻き立てた。 パチパチパチパチ 「正解だよ、鷹野さん。いやぁ、もうばれちゃうとはねぇ。しかも、僕の能力の一言一句間違えていない。本当に恐ろしいよ、鷹野さんは。」 愛縷は拍手と称賛の言葉を鷹野に送ったが、彼の笑顔は邪魔者を消そうとする暗殺者のような冷酷なもののように感じ取れた。 「さて、能力が分かったのならもう隠す必要は無いね。それでは僕の能力の一片をお見せしましょう。手札を3枚捨てて、魔法カード、《サーバント・コール》を発動!(手札6→2)」 サーバント・コール 魔法カード 手札を任意の枚数捨てて発動する。このカードを発動するために捨てたカード1枚につき1体、デッキ・手札・墓地から「サーバント」と名のついたモンスターを特殊召喚する。 「決闘時空(デュエルスペース)第八話 Part4」へのコメント By 千花白龍 2014-03-28 11:49 そして始まる更なる大盤振る舞い。 ラスボスはいくつもの能力が使えたり、配下の能力が使えたり、今まで倒した四天王が復活してきたりと、『大きな力』を使う場合がありますね。遊戯王ゼアル最終回でも今までのホープ全員集合という大盤振る舞い。どのホープがどんな効果を持っているかなんて使い慣れてないと把握しづらいから対処もしにくい。 今までいくつかのV能力のテキストを見てきたけれども、それが全てではないだろうし、今までのが総結集でかかってくるのもそれだけで恐ろしい。一人に一つずつ、が原則なのは強力な能力であるため。ボスプッチみたいな連戦形式とどっちがマシだろうか…。 ただ、強力な効果、たくさんの効果があるので把握し、使いこなすのは大変なはず…。しかし、使いこなしているんだろうなあ…(主人公相手なら逆に敗北フラグとなる?)。 よし、鷹野さん、後はよろしく! pc [編集] By 呵々闘諍 2014-03-28 12:27 >千花白龍さん 愛縷の次の手はラスボスの十八番であるボスラッシュ! 使いこなしてるか否かでいうと正直微妙なところです。実はほとんどの能力が有限で使うタイミングを失敗すると一気に不利になります。 これ以上の情報漏洩は危険だと思って愛縷も賭けに出ています(多人数相手は連戦での情報アドバンテージを抑えるため) 普段の鷹野さんならば、苦戦はしませんが、異常な事態に飲み込まれてる状況。どう対処するのか!? pc [編集] [1-10] コメントを書く [最近][過去#] [戻る] |