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偽りの名 呵々闘諍の日記(力水の書いたやつ) 決闘時空まとめページ
2013-06-10(月)
決闘時空(デュエルスペース)第八話 Part1

ステップ1、灰色の国にある古き学び舎の書庫に行け
ステップ2、書庫の死の世界の扉を通り夢の花園へ進め
ステップ3、花園にいるXero(はじめ)なる魔の王と契りを交わせ
ステップ4、夢の地にある世界を救いし者たちの学び舎で黒き門を潜れ
ステップ5、門の先にある現の地の学び舎で世界を救いし者たちと3つの死の世界の使者の前で黒き門を開け










最終ステップ、我らを解放しろ



決闘時空 第八話「彷徨う者」



「うあああああああああああああああ!!」
鷹野麗子は叫び声と共に起床する。目を覚ますと、嫌な汗で全身がびしょ濡れだった。
「……大丈夫?鷹野さん……。」
「どうした、たかのっティー!?」
鷹野を気遣う川原静江と真田杏奈。彼女たちは急に叫び声を上げた鷹野が心配でしかたなかった。
「大丈夫よ、ちょっと嫌な夢を見ただけだから…。」
「そうなんですか……。」
「なんだ、夢か。てっきりパラコン君が寝込みを襲ってきたかと思ったよ。」
「もしそうなら逆にこの世から消し去ってるわ。」
鷹野の冗談とも思えない冗談を聞いて3人は笑う。鷹野はなんとかごまかせたかと心の中でホッとしていた。

2008年10月22日
鷹野たちは今、とある町の旅館に泊まっている。
クリムゾンドラグーンの事件以降、地上に帰還した鷹野たちは翔武学園には戻らず、修行という名目で各地を旅していた。
そう、表向きの目的は修行である。

(ったく、早く終わらせたいものね。)
しかし、鷹野の本当の目的は違った。ある日を境に彼女の頭の中に声が語りかけてくるようになった。
それは、9月15日、鷹野が《うずまき》の力を取り込んだパソコンで特殊な言語を読み取っているときの出来事であった。
まるで“それ”は誰かに見つけられるのをわかっていて潜んでいるようであった。
“それ”は文字であり、意思であり、鷹野を待っていた。“それ”は鷹野が自分を開くのを知っていた。
“それ”は大昔の文字であるにも関わらず、鷹野麗子、ただ一人を狙っていた。
まるで“それ”は繰り返してきた映像を見るかのように鷹野に狙いを定め、彼女の目に入り込んだ。
以降、“それ”は鷹野に語りかけるようになった。彼女の強靭な精神は“それ”を拒み、“それ”の指示とは違う場所を転々と歩き、対処法を探していた。
しかし、昼夜を問わず語りかける“それ”に鷹野は徐々に疲弊し、打つ手がないと判断した鷹野は“それ”に従うことにした。

「さて、そろそろ出発しようかしら。」
「ええ…そうですね…。」
「よっし、今日はどんなところに行くのかな〜。」
着替えと朝食を済ませた3人は目的の場所に向かうことにした。
鷹野たちがいる町は外向きは豊かな緑がところどころ残っている村のような町であった。しかし、裏の世界では“グレー・ゾーン”と呼ばれている。
グレー・ゾーンは表の世界と裏の世界の仲裁を担う場所であり、神聖な場所である。町の住人のほとんどは知らないものの、ごく一部の者たちは絶大な力を誇っており、表か裏、どちらかの住人が手を出せば、手を出した側の住人は徹底的に他の者たちに駆逐されるほどである。

そして、グレー・ゾーンにはある噂があった。
グレー・ゾーンはデュエリスト能力発祥の地と呼ばれているのである。
デュエリスト能力の根源である神、リンネの存在を知っている者ならそうでは無いときっぱりと否定するであろうが、一説によるとリンネが初めて人にデュエリスト能力を与えた場所がここではないかと言われている。
その証拠になるであろうか、全世界のデュエリスト能力の所持者の系図を辿ると必ずどこかでこの町にぶつかるのである。
「ちょっと待ったー!!」
鷹野たちが旅館から出てすぐに鷹野たちに制止を求める叫び声が響き渡った。
「あら、パラコンじゃない。どこほっつき歩いてたの?もう行くわよ。」
「パラコン君…あの、おはよう。」
「おっす、パラコン君!」
彼女たちを呼び止めたのは他でもない本名不明の少年、パラコンボーイであった。彼は幾度と無く本名を明かそうとするが、運命のいたずらか、神による罰なのか、未だ公表されない悲劇を背負った少年である。
「野宿しろって言ったのは鷹野さんじゃないか!」
「そうだったからしら?私は外で寝るのもおつなものよと優しくアドバイスしてあげたのだけど?」
パラコンの抗議に鷹野はさらりと返す。川原も真田も昨日のことを思い出していたが、確かに鷹野がパラコンにそう言っていたのを思い出した。
二人は何かの冗談だろうと思って、先に旅館の方に上がっていたのだが、その後に鷹野は《E・HEROネオス》の必殺技である『ラス・オブ・ネオス』ばりの手刀を喰らわせて気絶させたまま放置してたのだ。

「なんだってんだよ、ホントに!気がついたらどういうわけか翔武学園の風紀委員長に出くわして『む、怪しいやつ!喰らうがいい、アブソリュート・パワーフォース!』とか言われてぶっ飛ばされるし、通りかかった風紀委員の一人には『外は風邪をひくぞ。』って哀れみの言葉を掛けられるし!だったら、布切れ一枚くらい貸せってんだ!」
「うるさい。」
シューっと鷹野はパラコンに向かって殺虫剤を噴射する。目を潰され「ぎゃあああああ!!」とのた打ち回るパラコンであったが、いつもの光景だなと心配する者は誰一人居なかった。

(それにしても、風紀委員長と風紀委員か…。)
鷹野はパラコンの話に出てきた風紀委員長と風紀委員に思い当たる節があった。というより、何故だか声の内容であるステップ5、“3つの死の世界の使者”が脳裏に浮かんだ。
(確か、この町に風紀委員長と二人の委員が住んでいたはず…。)
グレーゾーンの住人はほとんどが一般人と変わらず、それどころか翔武学園の生徒が多く住んでいるため、風紀委員長たちが通りかかってもおかしくはない。
実際に風紀委員長や委員たちは住んでおり、風紀委員に所属する生徒は3人以上在住している。
だが、鷹野の頭の中で思い浮かべた3人は特異であった。学園に来て初めて会ったときからその3人からはただならぬ気配を感じていた。
(ここで考えても仕方ないわね…。)

「さて、そろそろ本当に行くわよ。」
「はい、鷹野さん。」
「出ぱ〜つ!!」
もがき苦しんでいるパラコンを無視して、鷹野たちは目的地へと向かうのであった。

二十分ほど歩くと、町並みがだんだんと遠のいていき、緑豊かな自然の大地が広がっている場所を鷹野を先頭にして歩いていた。パラコンもぶつくさと文句を言いながらも着いてきている。
「綺麗なところですね…。」
「こういうところでお弁当とか食べたいよね。」
緑生い茂り、色とりどりの美しい花が咲くこの場所は驚くことに、町の一角なのである。民家も転々とあり、大草原の家のような暖かな雰囲気がそこにはあった。
だが、1時間ほど歩いているとその場所に相応しくない光景が目に飛び込んできた。
「ひっ…!」
「な、なんだ、ここは…。」
「鷹野さん、もしかして、ここが?」
「そうよ、目的地よ。」
目を見開き、目の前の光景を目の当たりにして、鷹野以外の者たちは後ずさりをした。
そこは、古びて廃校となっていた小さな学校であった。
窓ガラスはところどころ割れており、外壁に草木が侵食し、廃校になってから大分時間が経っているのが伺える。
しかし、それよりも恐ろしいものがそこにはあった。学校を背にするとその直線状の先、かなり遠くに大きな校舎、翔武学園があるのだ。果たしてこれは偶然なのであろうか。まるで、この廃墟と化した学校は翔武学園の影のように思えるのだ。
「入るわよ。」
鷹野が錆付いた門に触ると、軋む音を鳴り響かせながらも門は開く。パラコンたちも戸惑いながらだが着いて行くことにした。

学校の中に入ると、意外なことに、外と比べて中は最近使われたのであろうか、綺麗に清掃された跡が見える。
とはいえ、廃墟と化した校舎内が綺麗など不気味にしか思えず、恐怖心を煽っていた。
鷹野は黙々と廊下を歩いていき、ある場所に着くと足を止めた。
「ここか…。」
その場所は『図書室』と書かれていた札が扉の上に張ってある部屋であった。
扉に鍵はかかっておらず、簡単に開いてしまった。
まず最初に視界に入ってきたのは無造作に本が積まれている山であった。ほとんどの本が戦前の古いものであったが、どういうわけか、最近の書籍も混じっていた。
鷹野は部屋を進み、探し物を始める。パラコンたちも恐る恐る部屋に入っていく。
図書室は学校の大きさに反してまるで無限に広がっていくような広さであった。
「「「ひっ!!!」」」
かなり奥に進んで行くと、パラパラと本をめくる音が聞こえてきて、パラコンたちは驚く。
そして、最奥には巨大な本棚があり、そこには一人の人物が本を読んでいた。
「「「で、でたー!!!」」」
パラコンたちはその人物を見かけると飛び上がった。廃校になったはずの学校に自分たち以外の者が居る事などあまりにも不自然で、幽霊か何かと思ってしまったからだ。
「人を見るなり失礼なやつらだな。」
本を読んでいた人物はパラコンたちの反応を見て腹を立てていた。
その人物は鷹野たちと同じくらいの少女であり、髪はクリーム色で、紫色のローブを着ていた。
「に、人間だったのか…。」
「びっくりした…。」
「おどかすなよ〜。」
パラコンたちは謎の人物の正体が人間と分かり安堵のため息をつく。
鷹野は目を凝らしてその少女を見ていた。少女は読んでいる本以外に足元に2冊の本が積んであった。見たことも無い文字であったが、少女の読んでいる本のタイトルは『辺獄の書』と書かれており、他の2冊は『天獄の書』、『煉獄の書』と書かれていると鷹野には分かった。
「あ、この本たちは私が借りてるから借りるなよ。」
「あなた、どこかで会ったことがあるかしら?」
鷹野の質問に少女はクスクスと笑い、ニヤニヤと返事をし始めた。
「さあねぇ。会ったかもしれないし、会ってないかもしれないな。お前たち、ここの本を借りに来たんじゃないんだな。」
「本を借りる?いったいどういうことだ?」
パラコンは率直に疑問に思ったことを声に出した。これも少女はニヤニヤとしながら答える。
「ここはよ、廃校になった学校だが、地元の連中が本を借りに来るんだよ。まあ、管理しているのは物好きな私ぐらいだし、ここに来るのも気分次第。みんな好きに借りるか、そのまま持ち帰ってる。とはいえ、中には危険な本もあるから、私を通さず本を借りるのは命を捨てるようなもんだがな。ぎゃははは!」
少女は下品な笑い声を最後にする。しかし、危険と聞いてパラコンたちはギョッとした。よくよく本棚を見てみると、よく分からない言語の本が大量に入っており、目を凝らすとオーラのようなものを放っている本さえあった。

「死の世界の扉を開きたい。」
鷹野が急にそう言い放つと、少女の笑いは止まり、顔が引き締まる。
「死の世界の扉ねぇ。あいにく、この3冊は貸し出し中なんだが…。まあ、いいだろ。」
少女は読んでいた本を閉じ、足元の2冊の上に置いておく。そして、本棚を見回し、一冊の本を取り出した。
すると、本棚はゴゴゴと動き始め、左右に別れた。
「…っ!!これは、いったい!?」
「そんな、嘘…!?」
「おいおい、ここは学校の中だよな!?」
パラコンたちは困惑していた。本棚が別れた先には、学校の大きさよりも遥かに大きな黒い扉がそこにはあったのだ。
そして、ゆっくりとだが、扉は開き始める。その中は暗い闇で満たされており、光など一切無かった。
「さあ、行くなら行きな。私は止めはしないぜ。まあ、死にはしないとは思うけど、面倒なことになるのは…おっ…!」
少女が話し終わるよりも前に鷹野は扉の奥へと進んで行ってしまった。
「ま、待ってよ、鷹野さん!」
「ひっー…!!」
「たかのっティー!!」
パラコンたちも恐怖しながらも後に続いていく。少女以外が入っていくと、扉は閉まっていき、本棚も元の場所へと戻って来た。
「さて、今度はどんなやつを連れてくるのかな?この世界の役に立つものか、この世界に敵対するものか。まあ、“あいつ”の言うことが正しいなら、今度は敵の方らしいけどよ。ぎゃははは!!」
少女は誰もいなくなった図書室で一人、つぶやき、笑う。






鷹野たちは暗闇の中を彷徨っていると、少しずつだが、明るい光が見えてきた。
光のほうへと進んでいくと、いつの間にか花畑に佇んでいた。
「ここが“声”の言っている場所、“夢の花園”…。」
鷹野は周りを見て“声”の言っていることが本当だったのだと確信していた。パラコンたちはというと、周りの急な変化に戸惑い、慌てふためいている。
「やあ、鷹野さん、パラコン君、川原さん、真田さん。」
自分たちを呼びかける声に反応し、その方を向いた鷹野たち。声の主は黒い薄汚れたマントを羽織っており、長い白髪の男性であった。
そう、佐野と朝比奈と出会った愛縷である。


続く
「決闘時空(デュエルスペース)第八話 Part1」へのコメント

By アッキー
2013-06-11 02:04
ウワーッ、鷹野さんだ!?
・・・と、ホラーだけに楳図かずお叫びでこんばんは。
叫びのシーンは楳図絵で浮かんできました。(←おい)

武者修行でフェードアウトかと思いきや、物語の重要な局面に絡んできていたとは・・・。
古代文字(ヒエラティックテキスト?)に、グレーゾーン、黒い扉、“夢の花園”。
こんな謎めいた状況には、鷹野さんは打ってつけかもしれません。
一気に物語の核心に近付いてきたような雰囲気ですが、気になるのは最後の一文。解放するのが「我」でなく「我ら」というのが特に気になります。

「我ら」と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、我龍、基、霧恵、エリィ、愛縷ですが、そう言えば残る1名は出てきてませんでしたね。もしかしたら既に出てきた誰かなのかもしれませんが。
現在ステップ2までクリアしていますが、魔王は愛縷として、“はじめなる魔王”というのが基くんを思い起こさせてならないのですが・・・・そもそも、どういう繋がりなのかということから考えないといけませんね。

ローブの少女。何者なのかはおよそ見当がつきますが、何だか雰囲気が違う・・・?
ラストで愛縷まで登場しましたが、どんな役割を果たすのでしょうか。
彼の目的も未だに謎ですが、相変わらず危ない空気が漂っていますね。
もしも「我ら」というのが、“夢世界の住人全体”のことだとすれば、愛縷の目的も方向性だけは見えてきますが・・・。(憩いの湖での発言を思い出しつつ)

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By 呵々闘諍
2013-06-11 20:41
>アッキーさん
>まさかの鷹野さん登場
実は物語のキーパーソンの一人である鷹野さん。彼女がいなければある意味ではこの作品は無かったかもしれません。この話についてはまた次回以降で。

>謎の「我ら」
これは伏せておきますね(笑)

>愛縷と基の関係
どういう関係なんでしょうかね…(すっとぼけ)

>ローブの少女
おそらく、想像されている人物であってます。雰囲気が違うのは、鷹野さんたちの前だからですかね。

>愛縷の目的
愛縷「みんなを幸せにすることだよ!」
一応、嘘は言ってません…。
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[編集]
By 千花 白龍
2013-06-11 21:26
パラコンボーイ!パラコンボーイじゃないですか!相変わらずな扱いにどこか安堵してしまう奇妙さ。安定のパラコン。そして鷹野さんの度胸の良さも相変わらず。さあ、ステップ1、2をクリアして次は3だ。でも、敵を連れてくるとな?誰にとっての敵かな?

ツヲ「Xeroとは、X+エロかな。」
白龍「絶対違う。」
ツヲ「鷹野ちゃん、デュエルしろよ。」
白龍「後にしなさい。今は謎解き、もとい状況整理が先です。」
ツヲ「解放か。つまり、今は封印されていると。誰が封印したのかな?」
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By 呵々闘諍
2013-06-11 21:49
>千花 白龍さん
>みんな大好きパラコンボーイ
あっぷるぱいさんの「プロジェクトシリーズ」でピックアップされた彼ですが、原作や小説内でやってることは褒められたものではないですからね。故にいじられる!

>謎のステップ
こればっかりは、物語の後半までお預けですね。すみません。

>Xero
そう、XeroはXとeroを合わせたエロワード!…ではなく、これでXero(ゼロ)と読ませます。0、つまり、はじまりです。

>解放
封印というより、閉鎖の意味合いが強いかもしれません。果たして、何が解放されるやら…。
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