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偽りの名 呵々闘諍の日記(力水の書いたやつ) 決闘時空まとめページ
2013-09-26(木)
決闘時空(デュエルスペース)第八話 Part2

決闘時空 第八話「彷徨う者」続き
「初めましてだね、僕は愛縷っていうんだ。」
「愛縷…。あんたがはじめなる魔の王ってこと。」
鷹野は愛縷の自己紹介を聞くや否や単刀直入に質問を投げかける。鷹野の問いに対して、何かおかしいのか愛縷は腹を抱えて笑い始めた。
「にゃははははははは!魔の王、魔の王だって!にゃははははははは!だ、ダメだ!その名前で言われるの久しぶりすぎて、ひっく、おかしくて、ひっく、笑いが止まらない…!にゃははははははは!」
愛縷は笑い転げてその場をのた打ち回っていた。咲き乱れている花を潰しながら転がっているせいで体中に色とりどりの花が張り着いていく。

「なんだこいつ…。」
「不審者…。」
「不審者だよね…。」
パラコンたちは愛縷の一連の行動を見て距離を置き、冷めた目で彼を見ていた。出会って数分もしていないが、明らかに関わってはいけない人物ということだけは分かっていた。
しかし、鷹野だけは…
「悪ふざけもその辺にしてくれるかしら。くだらない茶番を見ていけるほど暇じゃないのだけど。」
物怖じせず、愛縷にきっぱり言った。
「いやいや、失敬、失敬。懐かしさのあまり感傷に浸っていたよ。」
愛縷は立ち上がると笑いすぎて漏れていた涙を拭い、周りに付着した花を払っていた。

「じゃあ、本題に入ろうか。」
愛縷の緩んでいた顔が少しだけきりっと締まる。今までのぽかぽかとした雰囲気からいきなり肌を刺すような寒さを感じさせる緊張感にパラコンたちも身構えた。
「鷹野さんの目的はこれでしょ。」
愛縷は右の掌を見せるとそこからカードが浮かび上がってきた。そのカードは黒い霧のようなオーラを醸し出し、回転していた。
「このカードが僕との契約の証。これを手にすれば君の望みは叶う。でもね、ただ渡すだけではダメなんだ。僕とのデュエルを通してじゃないと渡せない。あ、心配しなくてもいいよ。例え負けてもカードはあげるから。契約はデュエルをすればいいだけで、カードはその証でしかないから。う〜ん、でも、それだけじゃここまで来た苦労に見合ってないよね。それじゃあ、こうしよう!僕に勝てたらカードだけじゃなくて君の悩みの種も消してあげよう。その代わりに僕が勝ったら1枚だけ君からカードをもらうんだけど、それでいいかな。」
独り言のように説明をする愛縷。さらりと重要なことを言い、鷹野たちにとって有益かどうかも分からない条件を勝手に持ち出していた。
パラコン、川原、真田の3人はその説明に胡散臭さを感じ取り、首を静かに横に振っていた。鷹野もこんな要求を呑むはずがないとパラコンたちは思っていた。

「分かったわ。デュエルをしましょう。」
「「「鷹野さん(たかのっティー)!?」
しかし、鷹野はイエスと答えてしまった。彼女にはまるでパラコンたちなどいないかのように振舞っていた。
「よっし!それじゃあ、デュエルだ!…と言いたいところだけど、パラコン君達は納得してないみたいだね。どうだい?どうせなら全員で一度にまとめてかかってこないかい?鷹野さんが負けるなんてことは万に一つはないと信じているだろうけど、得体の知れない僕とデュエルをするんだ。大勢で挑んだほうが安心じゃないかな。」
愛縷の提案に聞いた直後は乗り気ではないパラコンたちだったが、その考えはすぐに消し飛んでしまった。
今の鷹野を見て、“もしも”と思ってしまったからだ。
鷹野が負けるはずは無いといつもの彼女の姿を見ていたら即答できる。しかし、今の鷹野の姿は違った。普段の余裕はどこかへ行ってしまっており、“もしも”この鷹野がデュエルをしてしまったら。
“もしも”負けてしまったら。
パラコンたちは鷹野がどこか遠くへ行ってしまうのではないかと不安に駆り立てられていた。
「鷹野さん、僕たちも一緒にデュエルしていいかな。」
「私にもやらせてください…!この人にだけは負けちゃいけない気がするんです!」
「たかのっティー、あたしも助太刀するよ!」
パラコンたちの要望を聞いて鷹野は一言、「分かったわ。」とだけ答える。
全員参加の意思表示を見て愛縷は「待ってました!」と言わんばかりの笑顔で張り切っていた。
「ルールはそちらが同時にターンを進める変則タッグデュエルということで、いいかな?」
愛縷のルール提示に鷹野たちは頷き同意する。
そして、5人はデュエルディスクを構えて展開する。


「「「「「デュエル!!」」」」」


「私たちのターン…」
「おっと、手札から《先取り天使》を捨てさせてもらうよ。残念だけど先攻は渡してもらおうか。(手札5→4)」


先取り天使 レベル1 光属性・天使族・効果
後攻のプレイヤーはデュエル開始時、手札にあるこのカードを墓地に送ることで、このデュエルを自分の先攻で始めることができる。


「……っ!」
鷹野たちの先攻で始まるはずだったデュエルだが、《先取り天使》の効果で愛縷の先攻に塗り替えられてしまった。
使用した愛縷はというと、「ごめんごめん。」と少し悪びれた様子であった。
「気を取り直して、僕のターン、ドロー。(手札5→6)」
「「「えっ…?」」」
パラコンたちは愛縷の不自然さにすぐさま気がついた。《先取り天使》を使い、手札が5枚から4枚に減っていたはずの愛縷の手札が5枚になっていたのだ。
ドローフェイズにカードをドローし、手札が5枚になっているのならば自然なことであり何も不思議なことではない。しかし、今ドローしたばかりの愛縷の手札は6枚になっているのだ。
「何も驚くことはないわ。デュエリスト能力よ。」
鷹野は動揺しているパラコンたちに冷静に呼びかける。デュエリスト能力と聞いて納得はしたが、
パラコンはどこか違和感を感じていた。
パラコンはデュエリスト能力の使い手が能力を発揮すれば瞬時にその全貌を理解するほどの洞察力を持つ。だが、愛縷の使ったと思われるデュエリスト能力には反応することが出来ず、全貌どころか一部も解析出来ないでいた。
「パラコン君が驚くのも無理ないかもねぇ。僕の能力はちょっと特殊だからねぇ。」
パラコンの心の中を見透かしたかのような発言にパラコンはドキッとする。
「ただ手札が元の枚数に戻っただけじゃないか。そっちの先攻から始まったと思えば関係ない!」
パラコンは愛縷の発言を一蹴する。川原や真田も「そうだ、そうだ。」と同調していたが、パラコンの内心では不安が渦巻いており、さっきの発言も自分に言い聞かせているようなものだった。

「威勢がいいのは良いことだ!やっぱり、パラコン君たちはすごいデュリストだよ!だから、“全力”で行かせてもらうよ!」
パラコンの発言で闘志に火がついたのか愛縷は喜んでそれに応えようとしていた。
「まずはモンスターをセット!(手札6→5)次に《二重召喚》を発動。(手札5→4)これで僕はもう一度通常召喚を行えるよ。さて、こいつの出番だ!《シャドウスピリットサーバント・ンゴラドギメ》!(手札4→3)」


シャドウスピリットサーバント・ンゴラドギメ レベル4 闇属性・爬虫類族・効果
このカードは1億以上の魔力を持つものでしか使役することができない。このカードの召喚成功時、自分のエクストラデッキから「闇聖霊−メギドラゴン」をこのカードの上に重ねる。また、この効果でエクシーズ素材となっているこのカードを取り除くことで、「闇聖霊−メギドラゴン」のエクシーズ素材を取り除いて発動する効果を発動することができる。こうして効果を発動後、効果を発動させた「闇聖霊−メギドラゴン」はエクストラデッキに戻る。


愛縷がモンスターを召喚すると愛縷の影が形を変化させ、影から分離する。その影だったものは真っ黒であるが、確かに小さなドラゴンの形をしていた。
「『ンゴラドギメ』の効果発動。召喚成功時に…」
「……っ!デュエリスト能力発動!」


鷹野 麗子 LP8000→LP4000



レベル2 破局氷縛(カタストロフ)
自分フィールドに表側表示の魔法・罠カードが存在しないとき、ライフを半分支払うことで、自分のエクストラデッキ・墓地・除外ゾーンから《氷結界の龍トリシューラ》1体をシンクロ召喚扱いで特殊召喚できる。


鷹野は現れたモンスターの危険性をいち早く察知し、デュエリスト能力で対抗しようとする。だが、能力を発動させようとした瞬間、彼女の心臓に衝撃が走った。
「ぐ!ぐぅう!!」
「鷹野さん(たかのっティー)!!」
苦しみ悶える鷹野を見てパラコンたちは声を掛ける。鷹野は弱気は見せまいと堪えるが、自分の胸に何かが突き刺さっているような感覚が続いていた。
「僕もデュエリスト能力を使わせてもらったよ。鷹野さんの能力は油断しているとすぐゲームエンドまで持っていってしまうからね。このターンはおとなしくしてもらっておくよ。」
このやり取りの間に『ンゴラギメ』は形を変えて大きなドラゴンへと変貌していく。
そう、かつて佐野を破った『メギドラゴン』に。

続く
「決闘時空(デュエルスペース)第八話 Part2」へのコメント

By アッキー
2013-09-27 01:51
およそ鷹野さんらしくない鷹野さん・・・?
負けると奪われるカードは《うずまき》くらいしか心当たりが無いですが、どうして《うずまき》を奪う必要があるかと考えると、あれが「世界を行き来できるカード」だからでしょうか。

思えば割と初期からキャラクターの性格が多かれ少なかれ違っていたりしますが、そもそも今いるのは現実世界なのか夢世界なのかという根本的なところから考えていくと、鷹野さんがキーパーソンという意味も見えてくるようなそうでないような。

おぼろげに、ぼんやりと、何かがわかりそうでわからない、そこが「決闘時空」の不思議な魅力。
謎が解けたときの爽快感を推理しながら待ち望みます。

愉快犯的に見えて堅実さも見え隠れする愛縷は、不確定要素を排除したいのか、あるいはその逆か。
魔力1億以上とは、まさに魔王。言わば愛縷専用カードというところですが、このンゴラドギメ、凄く面白いカードですね・・・! 具体的に言うとカンサー決戦編で出してみたい。(もちろん決闘時空での設定に反しないような形で)

前はカードを借りていたようなので、ほぼ間違いなく今回は闇聖霊のランク能力。
うろ覚えですが、どこかで愛縷は、デュエリスト能力を封じることが出来ると言っていたような記憶があります。

しかし単純に「相手のデュエリスト能力の効果を無効にする」という能力だと、相手がデュエリスト能力者でなければ意味が無い・・・。ランクXならではの性能なはず。
レベル5相当の性能で、この状況を説明できる効果となると、「カード効果の無効」(回数制限つき)というあたりでしょうか。
読み返しながら考えましたが、これの他には思いつかない・・・。

pc
[編集]
By 呵々闘諍
2013-09-27 22:06
>アッキーさん
ついに始まった鷹野さん達VS愛縷!
いきなり召喚されるメギドラゴンにどう立ち向かう!?

>愛縷の欲しいカード
愛縷「《うずまき》は持ってるんだよね。僕が欲しいカードはもっと価値あるものだよ!」

>キャラクターと世界
鷹野さん達がデュエルしてる場所は夢世界です。それで、鷹野さん達は現実世界の人達ですが、夢世界の影響で実は精神が蝕まれてます。
詳しくは後の作中でも語られます。

>ンゴラドギメ
すごく適当に作ったカードなのに好評とは…。
もちろん、好きに使っていただいて構いません!こちらもアッキーさんのところの子達を好き勝手使わせてもらっているので(笑)

>愛縷の能力
愛縷「ほう、真実に近づくとは…。生かしてはおけないな。」
pc
[編集]
By 千花 白龍
2013-09-28 00:04
ついに始まった愛縷さんとのデュエル。物語のラスボス系はたいてい「まとめてかかってこい」で多対一デュエルになる法則。(例:ドーマ編での遊戯&海馬。5D’sの遊星&ジャック&クロウVSゴドウィン。)
愛縷さんのデュエリスト能力は何かを「なかった」ことにしているのか?手札を捨てたことや鷹野さんの能力が「なかった」ことのように進行しているので。(しかし、本当にそういう類の能力なのか?)
何となく鷹野さん達に敗北フラグが立ったような…。
pc
[編集]
By 呵々闘諍
2013-09-28 14:05
>千花白龍さん
>ラスボスの法則
ラスボス認定される愛縷。1対1の真剣デュエルもいいですが、ボス戦は変則なのが好きな私です(笑)

>愛縷のデュエリスト能力
実はそんなに複雑な能力ではなかったりします。複雑な能力は話の後半に用意しているので。
既に決闘学園シリーズで登場した能力に近かったりします。

>鷹野さん達の敗北フラグ
実際の力関係では愛縷では普段の鷹野さん達に敵いません。
優位に立っている様に見えるのは精神を蝕んでいるからなんです…。
pc
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